HISTORY
唐津焼の歴史
長い歴史を誇る唐津焼は、1580年代頃、現在の唐津市南部にあたる岸岳城城主波多氏の領地・独特な風合いが出る砂岩質が豊富な地域で生産が始まったとされています。
この頃は、茶の湯の流行期。和物茶碗が日本各地で作られていました。唐津焼においては、豊臣秀吉による朝鮮出兵の際に連れ帰った陶工たちが、「蹴ろくろ」「登り窯」などの技術を伝えたことで優れた品質の焼物を大量生産することが可能となりました。生産地を拡大し、全国に出荷されるようになった唐津焼は最盛期を迎えます。
しかし、江戸時代になると、有田の磁器生産に力が注がれるようになり、唐津焼は衰退の一途を辿ることに。再興が起こったのは昭和初期。人間国宝・中里無庵により古唐津の技法が復元されると、作り手の数は増加し、現在では唐津市内に約70の窯元が存在します。

TECHNIC
唐津焼の技術
朝鮮から伝わった製法や多様な装飾技法が現代でも用いられています。
他の産地では分業化が進んでいる各工程を一貫して行う作家が多く、器や素材へのこだわりが感じられます。
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土の採掘
ざっくりとした土の質感、「土味」が魅力の唐津焼。作家それぞれが作風に合うこだわりの土を持っています。採掘した土を乾燥してから削り、砕き、細かく均一な土にしていきます。
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粘土づくり
土へ水を加えて、土練りを行います。よく練ることで粒子を均一にし、土に含まれる空気を抜いていきます。土の硬さを肌で確かめながら調整する熟練の感覚が必要です。完成した粘土は玉状に成形します。
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成形
作りたい形に適した方法を用い、完成品より1回り以上大きな寸法で成形を行います。特に朝鮮から伝わった「蹴ろくろ」「叩き作り」といった技法は唐津焼ならでは。成形後は自然乾燥させます。
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加飾
成形した生素地に、彫りや櫛目、掻き落としや刷毛目などの伝統技法を用いて装飾を加え、土に表情を出していきます。完了後、絵付けや釉薬掛けを行う場合は素焼きを行います。
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絵付け
日本で最初に筆による文様を描かれた焼物と言われている唐津焼。毛筆・刷毛、時には指や竹を使って器に文様を描いていきます。鉄による絵付けは、焼き上がると黒や茶色に発色します。
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釉薬
器の色・風合いを左右する釉薬は、植物の灰や鉱石、鉄などを水に溶かして様々な色を表現します。素地を浸したり、柄杓で掛けたり、色を掛け合わせたりしてコーティングを行います。
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本焼成
作品を窯に詰め、1250〜1300℃の高温で長い時間を掛けて焼き上げていきます。伝統的な登り窯を用い、薪による焼成を行うことも。冷ました後、検品・ヤスリ掛けをして完成です。
VARIOUS
唐津焼の種類
土や釉薬、技法の違いによって様々な表情を見せてくれます。

絵唐津EGARATSU
モチーフは簡略化された草木や花、鳥、幾何学模様など多岐に渡ります。 描き込みすぎない控えめな筆運びと周囲の余白のバランスが美しい、 唐津焼を代表する種類です。
無地唐津MUJIKARATSU
土灰釉(雑木の薪を燃やした後に残る木灰を用いた釉薬)や長石釉(岩石に含まれる鉱物から作られる)を掛けるのが一般的です。唐津焼の中で最もシンプルですが、素朴ながらも力強さがあり、使い込むごとに味わいが増していく器です。


斑唐津MADARAKARATSU
素地の鉄分や、窯を焚く燃料である松などの灰の影響により、青や黒の斑点が表面にポツポツと現れること、素地の凹凸・釉薬の厚みにムラがあることからその名が付きました。趣のある「ざんぐりと」した風合いは茶器に好まれています。
青唐津・黄唐津AOGARATSU•KIGARATSU
燃料の灰や生地の鉄分との化学変化により、焼き上がりの色合いが異なります。還元炎で青みを帯びた物は青唐津と呼ばれ、ガラス状に溶けた釉薬がたまったところに深い青みを見ることが出来ます。酸化炎で黄みを帯びた物は黄唐津と呼ばれます。


朝鮮唐津CHOSENGARATSU
黒と白の二色のコントラスト、自然に溶け合うグラデーションが楽しめます。境界に青や紫、黄色等の色が生まれることがあり、色の出現の仕方や釉薬の流れ方など、多彩な表情が鑑賞の見所となります。
黒唐津KUROGARATSU
漆黒から飴色、柿色まで、鉄分の量や酸化の度合いにより発色のバリエーションが豊富です。見る角度・光の当たり方によっても多彩な変化を見せ、一様に「黒」と言い切れない豊かな表情・深い色合いが魅力です。数多くの窯で焼造されています。


三島唐津MISHIMAGARATSU
彫った部分に別の色の土を塗り込むため、模様が際立ちます。朝鮮・三島の作風を日本風にアレンジした技法で、唐津では江戸時代に生産が始まり、多くの産地にその類型を見ることが出来ます。
粉引KOHIKI
三層構造のため、やわらかな風合いやぽってりとした厚み、趣のある白が楽しめます。古くから朝鮮で用いられた技法ですが、唐津焼では近代になって取り入れられた比較的新しい技法です。


HOW TO USE
唐津焼の取扱方法
汚れや匂いを付きにくくするため、使い始めに米のとぎ汁で30分程煮沸する「目止め」を行います。さらに、毎回使用前にさっと水に浸してから使うと、買った時の風合いを長く保てます。
貫入(細かいヒビ)に水分、茶渋などがしみ込みと、段々と器の色が変わったり、艶が出て来たりします。使い続けることで、自分だけの唯一無二の器に育っていきます。
割れたり、欠けたりした器も「金継ぎ」などの伝統技術を使って直すことで、新たな表情を見せてくれることも。手入れをすれば長く、何代にも渡って使うことが出来ます。
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